糖尿病・減量外科の特色
- 肥満症治療のプロフェッショナルチームが健康を取り戻すサポートを行います。
- 肥満外科治療認定施設です。 関連資料はこちら >>
- 豊富な手術件数と安全性。 短い入院期間(術後2日程度)
- 糖尿病・減量外科手術を熟知した外科医、麻酔医、看護師による手術および周術期ケア
- 糖尿病内分泌内科専門医による的確な診断と周術期サポート
- 手術の流れを熟知した管理栄養士によるわかりやすい栄養指導
- 医学的リハビリの専門職である理学療法士による個別運動指導
- チームの橋渡し役となる減量専属コーディネーターを配置し、一丸となってサポート
- 複数の術式、術後逆流に対する修正手術にも対応
- 国際学会でも積極的に発表し常に世界最新の情報に基づいた判断を心がけています。
- 母国語が日本語以外の患者さまのご相談も受け付けております。
私は減量外来と糖尿病・減量外科手術を担当しておりますが、これまで2000例以上の腹腔鏡手術および1000例以上の減量・糖尿病手術(現在一般に行われているほぼ全ての術式)を経験してきました。肥満・糖尿病・逆流性食道炎など良性疾患に対する腹腔鏡手術件数の圧倒的に多いアメリカで、15年前に日本人としては初めて減量手術の正式な臨床トレーニング(フェローシップ)を行いました。翌年にもう1年減量手術を主体とした内視鏡外科フェローシップを行い、帰国後は肥満・糖尿病・逆流性食道炎に対する外科治療をライフワークとし、国内外で講師として講演を行い、減量・代謝改善手術の安全な普及に貢献したいと考えております。
2016年に千船病院で減量チームを結成して以来600例(2024年8月現在)の減量・糖尿病手術を行いました。多くの方が術後2日程度で退院されており、安全な手術を提供できていると自負しております。
高度肥満症は、外科治療が必要となる病気
出典「肥満さよならの医学」 公財)循環器病研究振興財団
「肥満症」は「糖尿病」や「高血圧」とならんで医学的治療を要するれっきとした慢性の病気です。高度の肥満症ともなると多くの病気のひきがねとなりますが、遺伝、環境要因、生活習慣など複数の要素が積み重なっておきるため、一般の内科的治療のみでは歯がたたないことが多く長期的にみるとほとんどの場合にリバウンドしてしまうため、欧米では手術を一つのオプションとする考え方が広く受け入れられています。術後は少量の食事で満腹感がえられるようになることもあり、1年で平均して約3割の体重を減らすことができます。やせるだけでなく、糖尿病や高血圧、睡眠時無呼吸症候群などの肥満に伴う病気の改善が期待できます。外科治療に伴うリスクは肥満をかかえて生きていくリスクと比較するとはるかに低いとされているため、日本でも2014年から保険適応となり、ここ数年で手術件数は急激に増加しています。
また、糖尿病を伴う高度肥満症はさらに治療が難しいことが多く、2018年には本邦でもスリーブバイパス術が認められています。
■日本肥満症治療学会 アンケート調査結果報告 2023
「減量チーム」で医療&サポート
千船病院では、糖尿病・減量外科医、糖尿病内分泌内科専門医、麻酔科医、管理栄養士、理学療法士、看護師、薬剤師など30名以上のスペシャリストからなる「減量チーム」を結成し、多職種が連携して減量のサポートを継続して行います。
また、特色として各科の連携役であり、患者さまの窓口ともなる減量コーディネーターを配置することでより緊密なチーム医療を行っています。長期に健康を維持するには、手術をきっかけとして患者さまご自身がどれだけ生活習慣を改善出来るかが鍵となります。
術前にひとりひとりの患者さんに合わせた食事指導と運動療法を行いますが、この時点である程度生活習慣の改善が得られていないと、手術を受けても思うような体重減少は得られません。
体重増加の原因は複数が複雑にからんでいることも多く、分かっても単純には解決できないことが多いので、定期的なカウンセリングを通じ、減量を妨げている本当の要因を一緒に見つけましょう。
万一術後の体重減少が思わしくない場合には、同じ手術を受けた患者さまからアドバイスが得られるように、また、仲間の頑張っている様子をみて初心を思い出して頂けるよう患者会も行っています。
肥満症治療のプロフェッショナルチームが協力し、「減量の先にある夢」を応援します。
管理栄養士 田中 理恵子 より患者さまへ
「食事内容」「食べ方」など食習慣の改善は減量効果に大きく影響するため、安心して食事管理が行えるよう寄り添った栄養相談をさせていただきます。
手術前は安全に手術が受けられるように術前減量や手術後を見据えた「食べ方」について、
手術後は良好な減量を行いながら、栄養素が不足しない食品の選び方や「食事の調整方法」について、
一人ひとりの生活背景・食習慣などを考慮しながら、アドバイスさせていただきます。
新たな食生活のスタートを踏み出せるようサポートさせていただきますので、その他、食事・栄養について気になる点がありましたら、お気軽にご相談ください。
理学療法士 村田 尚寛 より患者さまへ
高度肥満でお悩みの患者さまが安心して運動が行えるようサポートさせていただきます。膝や腰などの痛み、関節の可動域、筋力、持久力などの評価を行い、運動時に注意して頂く点について一人ひとりの状態に合わせてアドバイスさせて頂きます。また、座る・立つ・歩くといった姿勢や動作は体重の影響で腰や脚に負担がかかりやすいため、それらの姿勢・動作の評価を行い、負担軽減のための姿勢やより効果的な歩行の練習なども行っていきます。
動作や運動について気になる点がありましたら、お気軽にご相談ください。
糖尿病内分泌内科 中島 進介 より患者さまへ
糖尿病内分泌内科では、まず肥満の原因となる疾患がないか精査させていただきます。原因となる疾患がある場合はその疾患の治療を、原因疾患がない場合は食事・運動・行動療法での経過をみた上で薬物療法の併用も検討させていただきます。10~14日程度の減量入院も数多く行っております。手術に向けて肥満に関連する内科的疾患、特に糖尿病のマネジメントが重要となりますが、患者様の病態を総合的に判断し、安全に手術が行えるようしっかりとサポートさせていただきます。
呼吸器内科 住谷 充弘 より患者さまへ
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は肥満と関連していることが多く、代謝改善・減量手術が予定されている肥満患者は、一般集団と比較してOSAの有病率が非常に高いです。しかし、多くの患者はOSAに関連した眠気や夜間尿に気づかず未診断となっていることが多いのが現状です。当院では手術に関連した心肺合併症を予防するために、術前にOSAのスクリーニングを行い、積極的にOSAの治療介入を行っています。OSAへの治療介入により眠気や夜間尿の改善に繋がり、良い睡眠を取ることにより結果的に日中の活動性の改善、減量につながる報告も認めています。OSAの治療介入により安全な代謝改善・減量手術、減量効果改善のサポートを行います。
麻酔科より患者さまへ
近年急激に増加している肥満手術について、肥満患者さん特有の合併疾患をしっかりと把握し、手術前〜手術中〜手術後に至るまで安全な麻酔をご提供致します。安全のために術前の禁煙は非常に大切で、手術をお考えの方は、お考えの時点からの禁煙をお願い致します。
きずの小さな腹腔鏡手術
- きずが小さい手術です(最大1.5cm程度)
- 痛みの少ない手術です(ブロック注射、痛み止めの持続注射と2種類の内服薬を併用。術後2週間目に内服痛み止めが必要な割合は2%以下です)
- 当日夕方〜翌日にはトイレ歩行が可能です。
- 術後1〜2日目での退院も可能となっています。(※飲水量が十分であることを確認)
- 日本製の最新の内視鏡システムを使用しています
- 医療用ハイビジョンモニターを使用し、縫合の際にミリメートル単位の微調整が可能です。
- ディスポーザブルの手術道具に関しても常に新しいものを比較吟味して、最も有効であると考える方法を追求しています。
- 腹腔鏡手術では、きずの感染やヘルニア(脱腸)は開腹手術に比べて少なくなっています。
- 体脂肪が多いほど、腹腔鏡手術のメリットが大きくなります。
手術は全身麻酔で、腹腔鏡で行います。5〜15mmの切開をおき、おなかの中に器具を挿入して行います。キズが小さいので、術当日夕方から歩行が可能となり、最短で術翌日の退院が可能です。スリーブの場合は医療用ホッチキスを用いて胃の外側を切り取ります。バイパスの場合は腹腔鏡下に消化管どうしを縫合します。当院では常に最新の医療機器を吟味して最良と思われる道具を選択して使用しています。また、当院の糖尿病・減量外科ではこれまで手術の途中で開腹へ移行した例はありません。
腹腔鏡下胃バイパス(ルーワイ胃バイパス)
胃を30cc程度の小袋に分け、その小袋を小腸につなぎます。これによって 少量の食事で満足感が得られるようになります。糖尿病に対する治療効果はスリーブ術よりも高いとされ、ピロリ菌に感染したことがなく重症の逆流性食道炎がある方には良い適応と考えます。当院では、スリーブ術後の難治性逆流性食道炎や症状の強い胃食道逆流症の方に腹腔鏡下での修正胃バイパス術を行っております。
腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(スリーブ術)
胃を直径3cm程度の部分を残して切り取り、バナナ1本分程度の大きさにします。シンプルで健康保険を用いて行えるため、現在日本で9割以上が当術式となっています。当院では、医療用ホッチキスを用いて切除した後に、切除ラインを全長にわたり手縫い縫合で補強しており、これまで230例以上行っていますが縫合不全や緊急再手術を来した症例はありません。(2021年2月現在)長期的合併症の一つとして逆流性食道炎があるため、逆流性食道炎の診断に習熟しており万一の際の修正手術(現在のところ腹腔鏡下胃バイパス術が標準術式)に対応が可能な施設で手術を受けることをお勧め致します。
腹腔鏡下スリーブ・バイパス術
スリーブ・バイパス術は糖尿病に対して高い治療効果を持っている手術です。全国でもこの手術を行っている施設はまだわずかのみですが、当院ではインスリン使用者などスリーブ術のみでは糖尿病に対する効果が不十分と思われる患者さんなどに対して行なっています。民間の先進医療保険にご加入の場合には、保険診療と同様の費用で行えます。
下記①~③すべてに該当し、6ヶ月以上の内科的治療によっても十分な効果が得られない場合に適応となります。
①糖尿病を伴ったBMI35kg/m²以上の肥満症
②初診時のABCDスコアが5点以下、もしくはインスリン投与を受けている
③文書による同意が得られている
ABCDスコア算出に用いる因子および点数について
ABCDスコア算出に用いる因子および点数
Score | 0 | 1 | 2 | 3 |
---|---|---|---|---|
年齢 | ≧40 | <40 | ||
BMI | <27 | 27-34.9 | 35-41.9 | >42 |
血中 Cペプチド 濃度 |
<2.0 | 2-2.9 | 3-4.9 | >5 |
糖尿病 罹病年 |
>8 | 4-7.9 | 1-3.9 | <1 |
ABCDスコアは4項目それぞれのスコアを足したもの
*BMI(body mass index)=体重(㎏)÷(身長(m)×身長(m))
逆流性食道炎に対する外科治療
胃食道逆流症では、胸焼けや胸痛などの典型的な症状以外にも、長引く咳や声のかすれなど、呼吸器や耳鼻科的な症状を示すことがあります。
このような非典型的な症状の場合に長年原因不明とされていることも多く、疑われたとしても胃薬を継続的に処方されて根本的な解決が得られない場合も多く見られます。
特に粘膜にあまり異常のない胃食道逆流症は、診断機器が普及しておらず検査に手間もかかるため、病態を正確に診断するのは困難ですが、当院では胃透視や内視鏡だけでなく24時間pHインピーダンスモニタリング、食道内圧検査、胃シンチグラフィーを駆使して、患者さんの胃・食道機能を客観的に評価することでテイラーメードの手術を行っています。