2024.12.27
IFSO2024(国際肥満代謝外科連盟)参加報告
IFSO2024(国際肥満代謝外科連盟)参加報告
ここがポイント
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IFSO 2024って?
メルボルンで開催された、肥満代謝外科に関する世界最大規模の国際会議のことです
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当院から5名参加しました
医師2名/管理栄養士/臨床工学技士/減量コーディネーター
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日本から唯一の受賞
IFSO Cookbookに当院の管理栄養士が考案したレシピが採用されました
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肥満治療に必要なもの
当院では様々な専門家で大規模なチームとなり取り組んでいます
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来年も開催されます
南米のチリが舞台となります
目次
1IFSOとは 肥満症・代謝疾患の外科治療について話し合う世界で最大規模の学術集会。本年は オーストラリアのメルボルンで開催され、当院の肥満・糖尿病内分泌センターから5名で参加しました
メルボルンで開催されたIFSO 2024に参加しました!
当院の減量チーム(医師2名、管理栄養士、臨床工学技士、減量コーディネーターの5名)より合計5つの発表を行いました。発表内容は、①減量・代謝改善手術における早期回復プログラム(ERAS)の利点、②肥満関連喘息に対する減量手術の効果、③BMI80を超える症例に対する栄養指導、④⑤日本における臨床工学技士と減量コーディネーターの役割についてでした。
医師でないメンバーにとっては初めての国際会議でしたが、積極的に参加し多くの学びを得ることができました。参加した全員が今後も日本における減量・代謝改善手術の発展に貢献していきたいと決意しました。
《各自の発表内容》
・センター長の北浜より、当院で行っているERAS(早期回復プログラム)の現状
・睡眠医療を専門とする住谷より、肥満関連喘息の成人に対する減量手術の効果
・管理栄養士の奥村より、クラスV肥満(BMI>60kg/m2)に対する食事・栄養介入について症例報告
・臨床工学技士の松尾より、当院の臨床工学技士が担う減量手術における安全管理について
・減量コーディネーターの住所より、日本における肥満コーディネーターの役割と今後の展望について
2①肥満症治療の最前線で、世界中の専門家とともに
千船病院では、肥満症で悩んでおられる方がより健康な生活を送れるよう、日々研究と治療に取り組んでいます。
肥満症は様々な健康問題を引き起こす可能性のある深刻な病気です。この問題を解決するため、世界中の医師や専門家が一同に集まり、最新の知識と技術を持ち寄り話し合う最大の会議が IFSOです。
IFSOは毎年世界各地で開催されますが、来年は南米のチリが舞台となります。千船病院のスタッフも、この国際的な舞台で、日本の肥満治療の成果を発表し、世界中の医療に貢献したいと考えています。
肥満治療は、外科手術だけでなく、内科治療、栄養指導、リハビリテーションスタッフ、看護師など、様々な専門家の協力が不可欠です。千船病院では、これらの専門家が大規模なチームを組み、専属の減量コーディネーターを配置することで患者さん一人ひとりに合わせた最適な治療を追求しています。
患者さんはもちろん、志を同じくする世界の医療関係者にも役立つ研究成果を積極的に発表し、日本の肥満治療のレベルを世界に示していきたいと考えています。
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文・肥満・糖尿病内分泌センター長/糖尿病・減量外科部長 北浜 誠一医師
3②肥満関連気管支喘息患者における減量・代謝改善手術が一つの治療オプションになる可能性
メルボルンで開催された第27回国際肥満代謝外科連盟(IFSO2024)にて、当院の肥満症に伴う肥満関連気管支喘息治療に評価をいただきました。
高度肥満症は、単に体重増加だけでなく、睡眠時無呼吸症候群など、さまざまな病気と深く関わっています。当院では、肥満が原因で呼吸器の病気、特に喘息や咳喘息に悩まされている患者さんを多く診てきました。従来の治療法ではなかなか改善しなかった症状が、減量手術によって劇的に改善するケースを数多く経験しています。
肥満が原因の喘息は、通常の喘息治療薬が効きにくいことが多く、治療が難しいことが多いです。減量手術は、体重を減らすだけでなく、喘息の症状を改善する可能性があると考えられます。
私たちは、この考えに基づいて、国際的な肥満手術学会で研究成果を発表しました。今後も患者さんの声を聞きながら、より良い治療法を探し、その成果を発信していきたいと考えています。
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文・呼吸器内科 部長 住谷 充弘医師
4③世界に届く!当院のレシピがIFSO Cookbookに採用されました
今回の学会では、「IFSO Cookbook Vol.3」が発刊されました。
このレシピ本には、減量・代謝改善手術を受けられた患者さまや、肥満に悩む方へ向けた栄養豊富かつ調理方法が工夫されたレシピが多数掲載されています。世界中の減量・代謝改善手術に携わる専門スタッフから公募されたレシピの中で、日本から唯一、当院の管理栄養士が考案したレシピを採用していただきました。
特に手術のあとは、少ない食事量で必要な栄養を補いつつ健康的に減量することが重要です。その中でも食事を楽しみながら過ごしていただけるよう、栄養指導でも工夫をお伝えしていきたいと思います。
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文・管理栄養士 副主任 奥村 あゆ
5④臨床工学技士がチームの一員となり減量手術の安全管理に貢献
臨床工学技士は、生命維持管理装置を中心に医療機器の保守点検や操作を行い、手術においては機器操作のサポートを行っています。近年手術用内視鏡の操作が認められ、2022年から当院の臨床工学技士はその技術を磨き手術に貢献しています。
さらに、他のスタッフと積極的に連携しながら術者をサポートし、特に多くの併存疾患を抱える高度肥満の患者さんに対して、円滑な手術の進行と安全の確保を行っています。術前には手術で使用する多くの医療機器を点検し、術後には高流量酸素療法システムの動作を確認するなど、万全の体制で安全管理を行っています。
これまでに200件以上の手術を担当し、その結果、手術時間が大幅に短縮されるとともに出血量にも影響なく、安全に手術が行われたことが実証できたため今回の学会で報告しました。
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文・臨床工学技士 松尾 悠
6⑤チーム医療における減量コーディネーターの役割
当院では外科医、内科医、精神科医、麻酔科医、看護師、管理栄養士、理学療法士、臨床工学技士、臨床心理士、薬剤師、事務、医療通訳を含めた30名以上からなる「減量チーム」を結成し、多職種が連携して減量のサポートを行っております。
今回の発表では、日本ではまだ導入している病院の少ない減量コーディネーターについて、業務内容や今後の展望等のポスター発表を行いました。専任のコーディネーターを配置することにより、医師が診療に専念でき、手術症例数・外来患者数が増加したほか、多職種がかかわる減量手術において情報の集約が容易になりました。今後は術後のフォローアップ率の向上、外来の待ち時間対策、臨床研究のさらなる支援などを目標としています。
現地では、コーディネーターの演題こそ少なかったものの、遠隔診療アプリを用いての術後フォローの成績など、今後の自身の業務の参考になるような発表も多く、実りのある4日間でした。
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文・減量コーディネーター 住所 美沙