2023.04.07
大腸がんの腹腔鏡下手術|外科(消化器外科)
大腸がんに対する腹腔鏡下手術
ここがポイント
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大腸がんに対する腹腔鏡下手術の実際
大腸がんに対する腹腔鏡下手術は増加傾向であり、技術的にも日々進歩を続けている
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腹腔鏡下手術と開腹手術の比較(利点・欠点について)
腹腔鏡下手術には利点と欠点があり、高い技術を要する
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ロボット支援下手術について
ロボット支援下手術も導入、技術の保証された医療機関での治療を推奨推奨
1大腸がんに対する腹腔鏡下手術の実際
大腸がんに対する腹腔鏡下手術は1991年に世界で初めて米国で報告されました。その後日本にも導入され、2000年代前半にはすべての大腸がんに行われるようになり、全国的に急速に広がりました。2022年の日本内視鏡外科学会による全国アンケート調査によると、現在大腸がんの約84%に腹腔鏡下手術が施行されています(図1)。
腹腔とは、おなかの壁(腹壁)とおなかの中の臓器の間にある空間を指します。腹腔鏡下手術ではこの腹腔に炭酸ガスを入れて空間を作る気腹という処置を行います。そして腹壁に5〜12mmの穴を4〜5ヶ所開けて、これらの穴から専用のカメラ(腹腔鏡)や手術操作を行う鉗子、超音波凝固切開装置などを入れて、モニター画面をみながら手術を行います(図2)。近年は腹腔鏡の技術的進歩は目覚ましく、カメラの先端を自由な方向に曲げることができるフレキシブルスコープや、ハイビジョンや4Kなどの高精細度画像で腹腔内を観察できるもの、3Dで立体的に見えるカメラも開発され、肉眼では見分けにくい微細な腹腔内の膜や血管もよく見えるようになりました。さらに赤外線腹腔鏡という特殊な性能を持った機器も登場し、インドシアニングリーンという特殊な薬剤を使用して血液やリンパの流れを観察しながらの手術も行われるようになり、日々進歩を続けています。
2腹腔鏡下手術と開腹手術の比較(利点・欠点について)
多くの臨床研究の結果から、腹腔鏡下手術は開腹手術に比べて手術時間が長くなる一方で、出血量が少ない、腸管運動の回復が早い、入院期間が短いことなどが報告されています。また、術後合併症の発生率、がんの再発率や生存率は開腹手術とほぼ同じであることも報告されています。
ただし、腹腔鏡下手術には高い技術が要求されます。これは開腹手術が簡単であるという意味ではなく、開腹手術も安全で確実な手術ができるようになるまでは相応のトレーニングが必要となりますが、腹腔鏡下手術ではさらに特有のトレーニングが必要です。腹腔鏡下手術では直接臓器を触ることはできません。3次元の構造物を多くは2次元のモニターに映して専用の器具を使用しながら手術操作を行います。立体感を頭の中で理解する必要があり、距離感や力のかけ方の調整など、高度の知識、技量が必要となります。
日本内視鏡外科学会ではその技術を保証するために、技術認定制度(図3)というものが設けられています。技術の評価には実際に行われた手術動画をもとに厳正な審査が行われますが、消化器外科領域においては近年、合格率が20〜30%と非常に狭き門となっています。当院では非常勤医師含めて3名の技術認定医が在籍して腹腔鏡下手術の治療にあたっています。
3ロボット支援下手術について
さらに、腹腔鏡下手術を発展させたものとして、ロボット支援下手術という方法があります(図4)。手術を行う器具と3Dカメラをロボットを用いて制御することで、より精密な手術が可能となりました。当院でも2021年より大腸がんに対してロボット支援下手術を行っております。
大腸がんに対する腹腔鏡下手術の概略を述べました。腹腔鏡下手術は低侵襲であり患者さんにとって有益な治療法であると言えますが、技量や経験が結果に大きく影響を及ぼす可能性があります。大腸がんに対する腹腔鏡下手術に関しその利点・欠点をきちんと理解して、技術的に保証された医師のいる医療機関での治療をお勧めします。
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- 外科ロボット手術