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診療部 ー 呼吸器内科

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群 (SAS:Sleep Apnea Syndrome)

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が止まる、または浅く・弱くなり、それによってさまざまな日常生活に障害を引き起こす疾患です。最近では、SASが高血圧や心房細動といった不整脈、循環器疾患と深い関わりがあることが明らかになってきています。

下記の方には、睡眠時無呼吸症候群(主に閉塞性)のリスクがあります。

  • 20歳の体重より10kg以上の増加を認める方(骨格が20歳ごろで概ね決まるため)

  • 直近の急激な体重増加を認める方

  • 気管支喘息の合併

  • 喫煙者

  • 慢性的に鼻詰まり症状がある方

  • 家族に睡眠時無呼吸症候群と診断された方がいる

閉塞性睡眠時無呼吸症候群

SASの病態で最も多いのが、上気道(空気の通り道)が塞がるまたは部分的に狭くなることで起こる閉塞性睡眠時無呼吸症候群です。夜間に繰り返し起こる無呼吸により、血液中の酸素が低下したり、頻繁に脳が目覚める事(覚醒)が起こり、身体に悪影響をおよぼすとともに睡眠を妨げ日中の眠気を増加させます。

一般的にSASの重症度は、AHI(Apnea Hypopnea Index:無呼吸低呼吸指数)で表します。これは10秒以上の無呼吸・低呼吸(呼吸が浅く・弱くなる状態)が1時間当たりに起こるイベントの数を表し、このAHIが5回以上認められ日中の眠気等の症状がある場合にSASと診断されます。

主な症状

「いびき」は大事なサイン

疲れているときやお酒を飲んだとき、鼻が詰まっているとき、体調が良くないときなどは、誰でも「いびき」をかきます。

すべての「いびき」が悪いわけではありませんが、なかには注意が必要な「いびき」も含まれます。
「いびき」は大きく分けて「単純性いびき症」「上気道抵抗症候群」「睡眠時無呼吸症候群」の3つに分けられ、「単純性いびき症」のように一時的なものは特に気にする必要はありません。

しかし、「いびき」が朝までずっと続いたり、強弱があったり、仰向けに寝ると大きくなったりするいびきは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疑いがあり注意が必要です。

他にも睡眠中の無呼吸、日中の眠気、起床後に認める頭重感、口喝による目覚め、夜間頻尿、日中の集中力低下、夜間の胸部の締め付け感・胸やけ感などの症状を認めることもありますが、普段日常生活が送れているため、はっきりとした症状を認めずに生活されている方もおられます。

閉塞性睡眠時無呼吸症の合併症

閉塞性睡眠時無呼吸症候群は頻繁に起こる無呼吸により、血液中の酸素の低下、中途覚醒による睡眠の分断等により多くの生活習慣病の合併症を引き起こす事が明らかになってきています。

治療抵抗性高血圧症、早朝時高血圧症、逆流性食道炎、心房細動、2型糖尿病などとの関連が指摘されています。

検査方法

まずは問診です。Epworth Sleep Scaleなどの睡眠問診表を用いて眠気などを伺いますが、ベッドパートナーからの情報も重要です。
鼻咽頭所見などを診察し、慢性鼻閉、扁桃腫大などの所見があれば耳鼻咽喉科と相談します。
必要に応じて心臓や呼吸の病気がないか確認するために、採血や心電図、肺機能検査などを行う場合もあります。
そのうえで、睡眠呼吸障害が疑われる方については簡易睡眠検査を自宅で行って頂きます。
簡易検査所見で精密検査を勧める方には、1泊2日で睡眠時のポリソムノグラフィー(PSG)検査を受けて頂きます。

(症状が強い方については3-5日の入院で、PSG検査後にCPAP加療等を行うことも考慮します)

検査の流れ

  • 問診・診察

  • 簡易検査(スクリーニング:自宅)

  • PSG検査(精密検査:1泊入院)

  • タイトレーション検査(CRAP効果判定検査:1日入院)

  • 自宅で治療・継続

  • 1〜2ヶ月ごとの定期受診

診察来院時に、CPAPの圧評価、マスク漏れ評価などを行い、CPAP継続治療のサポートを行います。

SASの検査は日中に無呼吸を起こしているわけではないため、夜間寝ている間に行う必要があります。検査は身体に様々なセンサーを装着しますが、痛みを伴うことはなく夜間にトイレに行くことが可能です。

PSG検査はSASの検査では最も精密な検査方法になります。PSG検査時には脳波も測定しているため、患者さまの睡眠状態がわかり、多くのセンサー(脳波・筋電図・心電図・呼吸・血液中の酸素等)を元に総合的に判定します。患者様が寝ておられるときにもセンサー装着状況を病室外で確認していますので、”センサーが外れて検査できない?”などの心配なく検査を受けて頂けます。

治療方法

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療法にはさまざまな方法があります。口腔内装置による治療、手術による治療、そしてCPAP療法(持続陽圧呼吸療法)です。病状・状況により治療方法は異なります。また、生活習慣・睡眠衛生の改善も合わせて行う必要があります。
閉塞性無呼吸主体の方についてはAuto CPAPなどの持続陽圧呼吸治療器を用いて治療介入を行い、必要時には、在宅酸素治療の併用も行います。

また高度肥満(BMI30以上)の方で肥満低換気症候群の診断基準に合致する方については、NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)などの導入も検討いたします。喫煙者においては禁煙を勧めます。必要時、栄養士による栄養指導、リハビリテーションの介入も行います。さらなる高度肥満症の方については、当院の糖尿病・減量外科と連携し短期入院での減量手術も検討します。胃SLEEVE切除の減量手術にて、91.6%の眠気のスコアの改善や80.6%のAHI指数の改善する報告を認めます。(Surgery for Obesity and Related Diseases.2016; 12(1),70-74)

治療効果

  • 無呼吸、低呼吸、いびきの消失

  • 睡眠の質の改善(熟眠・快眠)

  • ベッドパートナーも安眠できる

  • 日中の眠気、倦怠感の消失

  • 日中の活動性の増加(減量にもつながる可能性がある)

  • 集中力、記憶力が増す

  • 夜間尿の減少

  • 生活習慣病を中心とした予防および改善

  • PSG検査で自覚症状が乏しくても低酸素血症などを呈していた方は、慢性的に心臓や脳などにダメージを与える低酸素状態が治療により改善を認めます。

  • 閉塞性睡眠時無呼吸を合併したアブレーション治療を行った心房細動の患者さまにおいて、心房細動再発率はCPAP治療者は30%、未CPAP治療者は53%(平均18.8±10.3か月フォロー)と報告され、CPAPが再発減少につながる可能性があります。(Heart Rhythm 2013;10(3):331-337)

患者さまひとりひとりに合わせた治療方法

すべての方が直ぐにCPAP治療などを受け入れることができるわけではありません。治療効果が出るまでに時間がかかる方もおられます。CPAPなどの陽圧換気療法を行って、上手く眠ることができるようになれば、今までと異なった、熟眠感を新たに感じる方もおられます。しかし、普段の眠りと異なり顔周りにマスクを装着するために違和感を感じたり、CPAP機器から送られてくる風に慣れるのに時間がかかる方もおられます。

患者様がCPAPを使用できるようにフォロー

  • タイトレーション等でCPAPの治療効果がある方には、CPAPの治療継続していただけるように、CPAP使用データを院内から確認し患者様に情報提供

  • CPAPの圧調整を行う

  • 使用マスクを調整変更する

  • 口の開きを抑えるために顎止めを使用する

CPAPの使用状況などを病院から確認できます

CPAP使用時は1-2ヶ月に一度受診していただき、CPAP使用安定時は近隣のかかりつけ医の先生にご紹介も可能です。また、かかりつけ医でのCPAP中止判断や、使用コンプライアンス低下時にも積極的にPSGなどの再検査を行います。